4.将来の夢なんてない私が選んだ、美大受験【ひろ’s Colorful Life4】
将来の夢なんてない!
「やりたい仕事をする」「なりたい自分になる」というのはとても素敵なことですが、それがなかったりわからなかったりして苦しんでいる女性が大勢います。
「やりたいこと」「なりたい自分」が何かわからない。
これは大人だけの問題ではありません。
高校生になると、進路相談がはじまります。
社会を知らないのに、どんな職業やどんな生き方があるのかを知らないのに自分の人生を決めることを迫られる。
ミュージシャンとかサッカー選手とか、医者とか教師とか、お花屋さんとかパイロットとか、純粋になりたいものが、子どもでも知っているものならいいのです。
好きなものが学生時代に見つかるって、とても幸せ。
けれど少なくとも私は、学生時代にカラーセラピストなんて知りませんでした。
知らないものは、選択肢にのぼりません。だから選べません。
「夢をもて」
私は、「それができれば苦労しないわ!」と思っていました。
高校生のいる世界は狭いです。
その中で一生のことを決めるのは、元来無理があります。
私の通っていた高校は、医者とか、歯医者とか、弁護士とか、そういうものになりたい人が多い学校でした。
大学も付属に通わない半数は、東大やら早慶やら医学部やらを希望する人が多かった。
それを本当に望んでいたなら、私もそういう大学に行ったと思います。
けれどどうしても心震えなくて。
選んだのは、なんと美大だったのです!!
私、美大受験するの?!
音楽や演劇、ミュージカルが好きだった私は、舞台美術に興味をもちました。
とにかく感動屋さんだったので、自分も感動を生み出す側になってみたいと思ったのです。
そこで興味を持ったのが舞台美術。
先生に相談した結果、提案されたのが美大受験でした。
これにはびっくり。
何故なら、小さい頃から私にとって芸術といえば音楽で、一時期は音大進学も真剣に考えたことがあるくらいだったから。
なんといっても、1歳のお誕生日プレゼントがこれでしたし、
小学3年生のときに習い始めたのも、今も我が家にあるマリンバ。
これも母が、みんながやっているピアノとは違うものを習わせてくれようとしたからです。
私、美大受験するの?!
それは、それまで思いもつかない選択肢でした。
2浪が当たり前と言われている美大受験。
1次は英語と国語ですが、2次はデッサンと平面構成(色彩構成)です。
多くの受験生は、高校1年なり2年生から美大予備校の基礎科に通い、デッサンの基礎を学びます。
そして3年生で、本格的な受験コースに入る。
浪人生は、週6日、朝から夕方まで1日中実技のトレーニングです。
高校3年生になる春休みから美大受験のための予備校に通い始めた私は、はっきり言って出遅れています。
けれど、その予備校のポスターにはこうありました。
一生に一度は本気だぜ
よし、とにかくやれることを徹底的にやろう!
週6日、1日3時間の予備校。
高校3年生は浪人生と違って、普通に学校の中間や期末試験があります。
部活をやっている子は最後の追い込みです。
部活の試合や試験期間には予備校をお休みする友人たち。
けれど私は、倒れて入院したときをのぞいて、一度も休むことなく予備校に通い続けました。
結果、現役で合格することができたのです!
色彩検定1級はカンタン
時代がすこし飛びますが、稚内で暮らしていた新婚時代。
やることがなくてどう生きたらいいのかわからず、ストレス状態になっていた私は、暇つぶしに色彩検定の勉強をはじめました。
暇つぶしとはいえはじめてみたら楽しくて。
何が楽しかったのかというと、「知っていることを理屈でいうとこうなんだ!」という感覚で学べたこと。
美大出身でデザインの仕事をしていた私にとって、色彩検定で学ぶ内容は、すでに身についている感覚を理屈理論で言語化してもらっている感じだったのです。
おかげさまで楽しくカンタンに色彩検定1級合格。
ところがその後、本格的にカラーの世界を学び始めたときに言われます。
「色彩検定1級は難しい。独学なんて、とんでもない!」
え?
そうなの?
確かに色を理屈理論から学んで使えるようにするのは大変です。
スポーツと同じ。
だからある意味、私は恵まれていたのかもしれません。
でも、本当に単に恵まれていただけだったのでしょうか?
そんな時ふと思い出したのは、高校の1年間、毎日必死に白い紙と向き合った時間のこと。
くる日もくる日もデッサンして、色彩構成して。
色の三属性なんて言葉を覚えることではなく、使いこなせることが当然で。
それは大学で学ぶことではなく、大学に入るために身につけていなければいけないことでした。
毎回作品の評価を受けて、描けなくて落ち込んだり、「どうして美大なんて選んじゃったんだろう」と大泣きしたり、体を壊して入院したり。
そういうことをすべて乗り越えて身につけた色彩感覚だったことを思い出したのです。
「人と一緒」を嫌うのが美大生。
これは卒業旅行のバリ島で、ビーチで編んでもらったもの。